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兵庫医科大学医学会

内科学(冠疾患科)

講座(部署)紹介

循環器疾患、とくに循環器救急疾患の診療•研究•教育を内科学循環器内科と共同にて行っています。本学では、カテーテル室(IVRセンター)と冠疾患集中治療室(CCU)をもつ急性医療総合センターが平成25年4月に開設され、最新の設備のもと24時間態勢で急性心筋梗塞、狭心症などの冠動脈疾患にとどまらず、重症下肢虚血、急性肺血栓塞栓症、大動脈解離、重症心不全や致死性不整脈など多彩な循環器救急患者を対象に診療、研究、教育を行っています。さらに急性期診療にとどまらず、長期予後の改善を目指し、理学療法士など他職種との共同により、急性期からのリハビリテーションにより、社会復帰に効果を上げています。

研究の現状

概要

循環器疾患の中で、冠動脈疾患・末梢動脈疾患・動脈硬化を中心に基礎および臨床研究を行っています。急性心筋梗塞については新しい診断基準(universal definition)による全国規模の多施設共同研究(J-MINUET研究)を主導し、継続して行っています。また病理学講座と共同した血管内画像診断法に関する研究など、本学でしか行うことができない研究を進めています。



主題
  1. 血管内画像検査法を用いた研究:
    冠動脈・末梢血管(頸動脈・下肢血管)において血管内超音波法(IVUS)、光干渉断層法(OCT/OFDI)、血管内視鏡検査など各種血管内画像診断法の臨床研究に加え、剖検例を対象として病理学講座と共同で摘出心のex-vivoで血管内画像診断法を行い、病理所見と比較する研究を行っている。具体的には冠動脈・末梢動脈における炎症細胞浸潤とコレステロール沈着、新生血管増生やプラーク内出血、表在性あるいは深部の石灰化など動脈硬化のさまざまな病期における血管内内画像診断法の所見と病理像の対比を通して、動脈硬化の進展過程の解明に取り組んでいる。また、冠インターベンション慢性期再検査時に3枝にOFDIを行い、動脈硬化の経過を観察する研究も継続している。
    インターベンション治療で広く用いられているステントでは、従来型のステントにおける再狭窄が薬物溶出性ステントの登場により激減した反面、neoatherosclerosisやステント血栓症などの問題が指摘されている。このステント治療に対する冠動脈の反応を血管内画像診断法と病理から総合的に解析している。さらに血管内視鏡によるステントの観察に関する多施設共同研究(MICASA研究)を主導し、継続している。
    さらに下肢の閉塞性動脈硬化症に対するインターベンションについては、新しいデバイスの有用性を血管内画像診断法を用いて検証し報告している。
  2. 冠動脈・末梢動脈循環の病態生理に関する研究:
    冠微小循環に関しては急性心筋梗塞に対する再灌流療法後の冠微小循環の指標として、圧温度センサー付きワイヤーを用いたIMRが有用であることを報告してきた。このIMRと入院時高血糖の関係など再灌流後の冠微小循環障害の病態生理に関して検討を進めている。また近年、冠インターベンションの適応判断における狭窄病変の生理的な評価法としてFFRが用いられているが、左前下行枝と右冠動脈における近位側と遠位側のFFR値の変化の違いなどの基礎的な課題から、慢性冠動脈閉塞に対する冠インターベンションが対側血管のFFR値に及ぼす影響など、臨床におけるFFRの病態生理について検討している。
    心外膜側冠動脈に関しては、アセチルコリンによる血管内皮機能の評価法を用いて、薬物溶出性ステント留置後の血管内皮機能や、冠攣縮性狭心症における冠動脈弾性に関する研究を進めている。
    下肢動脈に関しては閉塞性動脈硬化症患者を対象として、圧温度センサー付きワイヤーを用いた血管予備能(VFR)による膝下動脈の血行再建術後の重症虚血肢の創傷治癒の予測に有用であることを報告し、それを用いて運動療法による血流の改善効果について検討している。また腸骨動脈閉塞が反射波により中心動脈血圧を上昇させることを示し、EVTにより閉塞を解除することが中心動脈血圧の低下を介して心保護効果を発揮さる可能性についても研究を進めている。
  3. 急性心筋梗塞の多施設共同研究:
    急性心筋梗塞では、高感度・特異的な心筋トロポニンの開発に呼応して新しい国際定義(universal definition)が提唱されたが、本邦の臨床現場では急性冠症候群の診断と治療に混乱を生じている。新国際基準が本邦に普及しない理由の一つとして、本邦における国際定義に基づく急性冠症候群の予後に関するデータの不在が指摘され、それを明らかにすることは今後の急性心身梗塞診療の国際比較のためにも不可欠である。そこで全国でuniversal definitionにより診断された急性心筋梗塞を前向き登録するJ-MINUET研究を主導し、その概要を報告した。現在、詳細なサブ解析に加え、長期予後の追跡調査を進めている。
  4. 心臓リハビリテーションと非侵襲的画像診断法に関する研究:
    入院から外来診療に至る継続的包括的な医療を実現するため、心臓リハビリテーションについては急性期介入を特徴とする多職種による疾患の再発予防・社会復帰の指導を行い、メディカルスタッフも積極的に研究に取り組み国内外に情報発信を行っている。また主に外来で行われる各種の非侵襲的画像診断法(MSCT・MRI・心筋シンチグラフィ)を組み合わせ、より臨床に貢献する画像処理ソフトウエアの開発に取り組んでいる。また心筋のみでなく下肢筋肉の血流分布を評価すべく画像処理研究を進めている。
  5. 分子学的手法を用いた心不全増悪機序解明の基礎研究:
    マウス大動脈縮搾術モデルにおいて、L-18の急性圧ストレスによる心不全の役割の検討ではIL-18がAMPKを活性化することが心筋保護に必須であることを明らかとした。この研究結果を現在発表準備中である。
    IL-18が急性圧負荷による心筋保護に必須であること、その機序として、AMPKが重要な役割を果たすことを報告してきた。また、肺動脈性肺高血圧症は予後の悪い疾患である。その発症機序を明らかにするために、マウス低酸素暴露による肺高血圧症モデルを用い、IL-18の関与を検討した。IL-18ノックアウトマウスでは、肺高血圧の発症が抑制されることを明らかとした。その機序はIL-18による血管平滑筋のNF-Bを介した増殖であることも明らかとした。
    また、IL-18が敗血症性心筋症の病態増悪因子であることも明らかとした。IL-18とLPS、カルシウムサイクリングとの相互作用が病態形成に関与すること主眼として、研究を進めている。
    今後、IL-18の心不全治療薬としての可能性を探る研究、IL-18の働きを抗体で抑制することにより、肺高血圧の抑制の可能性を探る研究を継続していく。
  6. 急性非代償性心不全急性期治療における至適ループ利尿薬投与法の開発:
    高齢化社会の中で、心不全の有病率は上昇し続けている。急性非代償性心不全の急性期治療で、様々な薬剤が血行動態を改善させると報告されてきたが、近年の無作為ランダム化試験で、その予後に対する効果は否定されている。我々はこれまでに、高張食塩水とともにループ利尿薬を投与すると、ループ利尿薬の利用薬効率が上昇することを明らかにした。この療法が、全国に広がるように、本邦で急性非代償性心不全の急性期治療で70%の患者に使用されるカルペリチドと比較し、利尿効果、臓器保護、入院医療費において非劣性を証明する多施設ランダム化試験を実施中である。その結果、本療法の普及を目指す。動物実験としては、トルバプタンの至適投与法の検討を行っている。トルバプタンを単独でマウス心筋梗塞心不全に投与すると死亡率が増加した。ところがトルバプタンとフロセミドを併用するとその死亡率の増加が抑制された。その機序にトルバプタンによるレニン-アンジオテンシン系の活性化、アクアポリン1の発現亢進を明らかとした。
  7. 循環器疾患における鉄の役割に関する研究:
    当研究室では、これまでに動物実験や分子生物学的手法を用いて、高血圧症や慢性腎臓病の病態形成にトランスフェリン受容体を介した鉄取り込みが関与していることを明らかにしてきた。酸化ストレスに関わる鉄はその他にも多くの病態に関係していると考えられる。今後は、動脈硬化症などの血管病変におけるトランスフェリン受容体および鉄の関与について検討していく。
  8. 心房細動による左心房形態変化の研究:
    心房細動が左心房の拡大をおこし、さらにその左心房拡大が心房細動の基盤になっている事が示されている。我々はMDCTやMRIを用いて左心房の形態を三次元的に構築し心房細動は左心耳付着部において特異的な左心房形態変化が起こる事を明らかにした。今後、左房壁の炎症や壁の線維化など、どのような因子が心房細動の発症に関与しているかを明らかにしていく。


自己評価・点検及び将来の展望
平成28年度、研究面では、急性心筋梗塞の多施設共同研究、冠動脈疾患・末梢動脈疾患の血管病変に対する血管内画像診断と病理所見の比較研究、下肢閉塞性動脈硬化症に対するステント留置前後の血管内超音波診断の解析研究などの研究結果について、海外の一流学会で発表を行い、英文雑誌に論文発表した。今後は、学会発表から論文投稿までの期間を短縮し、いち早く研究を業績化できるように努めていく。
臨床面においては、急性心筋梗塞に対するdoor to balloon時間90分未満をほぼ全例で達成し、大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁留置術などの新しい治療法を積極的に導入した。今後も、一般病院では行えない循環器疾患に対する最新の治療法の導入など大学病院にふさわしい循環器急性医療レベルを維持していく。

石原 正治 主任教授
石原 正治 主任教授
責任者| 石原 正治(主任教授)
専門分野:循環器病学
講師| 柏瀬 一路
合田 亜希子
TEL| 0798-45-6553
FAX| 0798-45-6551

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