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兵庫医科大学医学会

アレルギー疾患研究部門

講座(部署)紹介

当研究部門は、様々なアレルギー疾患モデルマウスを作製し、その発症メカニズムの解明と新しいアレルギー治療技術の開発を目的として、平成21年10月からスタートしました。花粉症(アレルギー性結膜炎・鼻炎)、喘息及び食物アレルギーはいずれも「上皮細胞」がアレルゲンに曝露されて発症することから、「上皮細胞を起点としたアレルギー発症機序」の研究を進めています。さらに、善本が代表の「アレルギー性炎症:原因の解明と治療技術の開発」プロジェクトが文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(平成22年度〜26年度)」に選定され、兵庫医科大学の基礎と臨床講座、さらには全国のアレルギー研究機関と連携し、アレルギー発症機序の解明と新規アレルギー治療技術の開発を行っています。

医師の仕事は非常に尊いですが、一生涯に治療できる患者数は多くはありません。一方、一つの有効な新薬は何百万、何千万人にものぼるアレルギー疾患に苦しむ患者様を救うことができます。これこそまさにリサーチドリームです。「アレルギーを科学して、アレルギーを治す」を目標に、研究にチャレンジしてくれる明るい大学院生諸君の参加を歓迎します。

研究の現状

概要

当研究部門では様々なアレルギー疾患モデルマウスを作製し、その発症機序の解明と新規アレルギー治療技術の研究を行なっている。特にアレルギー性結膜炎・鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎及び食物アレルギーはいずれも「上皮細胞」がアレルゲンに曝露されて発症することから、上皮細胞から産生されるサイトカイン(IL-33、TSLP)とアレルギー担当細胞(好塩基球、好酸球と2型自然リンパ球)によるアレルギー発症機序の研究を推進中である。

主題

  1. アレルギー性鼻炎の研究:我々は、ブタクサ花粉特異的アレルギー性鼻炎(allergic rhinitis; AR)モデルマウスを世界で初めて樹立し、その発症に花粉で刺激された上皮細胞から産生されるIL-33が関与することを明らかにした(J Allergy Clin Immunol,2012)。この花粉特異的ARモデルマウスは、アトピー素因を持つヒトのARに相当する。さらに、鼻粘膜局所でのみIgE抗体が検出される局所性ARの病態(PLOS ONE,2014)と環境微粒因子(PM2.5)のARに及ぼす影響を明らかにした(Clin & Exp Allergy,2015)。さらに最近、従来のIgE—マスト細胞/好塩基球経路とは異なる、IgEを介さないエンドトキシンを引き金としたAR発症機序を明らかにした(J Allergy Clin Immunol,2017)。
  2. 好塩基球の研究:従来、ヒトのAR発症における好塩基球の役割については不明な点が多かった。上記主題1のARモデルマウスを用いて、1)ブタクサ花粉曝露によって鼻粘膜に好塩基球が経時的に集積すること、2)好塩基球を欠損したマウスではAR発症が抑制されること、3)IL-33刺激を受けた好塩基球は種々のケモカインを産生することを証明し、AR発症にIL-33と共に好塩基球も必須の因子であることを明らかにした(J Allergy Clin Immunol,2012)。さらに、4)好塩基球はアレルギー特異的Th2細胞を誘導する抗原提示細胞であること(Nat Immunol,2009)、5)後に述べる主題4の経皮感作食物アレルギーの誘導に必須の抗原提示細胞であることを明らかにした(Int Immunol,2014)。
  3. アトピー性皮膚炎の研究:皮膚ケラチノサイト特異的にIL-33を過剰発現するトランスジェニックマウスを作製し、本マウスは激しいかゆみを伴ったアトピー性皮膚炎を自然発症することを報告した。その機序として、IL-33はマスト細胞と2型自然リンパ球を皮膚に集積すると共に、2型自然リンパ球を刺激してIL-5産生を誘導する結果、皮膚への著明な好酸球増多を誘導することを明らかにした(PNAS,2013)。
  4. 経皮感作食物アレルギーの研究:食物アレルギーは特定の食物を摂取した後に起こるアレルギー反応である。しかし、乳児湿疹やアトピー性皮膚炎に伴う皮膚バリア傷害による経皮的なアレルゲンの感作が食物アレルギーの発症の引き金であるというのが最近の考え方である。我々は経皮感作食物アレルギーモデルマウスを樹立し、1)アレルゲンに曝露した皮膚上皮細胞から産生されるTSLPによって活性化された好塩基球によって食物アレルギーの感作(誘導相)が成立すること、2)それに続くアレルゲンの経口投与によってマウス腸管内に産生されるIL-33がアナフィラキシーの発症に必須であることを明らかにした (Int Immunol,2014)。
  5. 肺への抗原曝露による抗原特異的なIgE産生を誘導の研究:我々は肺へのブタクサ花粉曝露によって誘導されるIgEの産生にB細胞特異的MyD88シグナルが必須であることを明らかにした。MyD88欠損マウスでは肺へのブタクサ花粉曝露で誘導されるIgE産生に加え、所属リンパ節での胚中心形成に不全があった。一方でMyD88欠損マウスにおける樹状細胞の活性化ならびにTh2 細胞の誘導は正常であった。B細胞特異的MyD88欠損マウスでは全身性MyD88欠損マウスと同様に肺への抗原曝露によるIgEの産生が低下していた。ブタクサ花粉にはToll様受容体(TLR)のリガンドが含まれるが、TLR2/4/9三重欠損マウスでのIgE産生は正常であった。一方でIL-1R抗体を投与したマウスならびにIL-18欠損マウスでは肺へのブタクサ花粉曝露によるIgE産生が低下していた。さらにB細胞特異的MyD88欠損マウスは肺への卵白アルブミンとIL-1α、IL-1βまたはIL-18の同時投与によるIgE1産生が低下していた。したがって、肺への花粉曝露はIL- 1α/βおよびIL-18産生を誘導し、B細胞のMyD88シグナルを活性化することでIgE産生を誘導していると考えられる(J Immunol,2014)。

自己評価・評価及び将来の展望

ARはその病態から、1)アトピー型AR, 2) 局所性AR(鼻粘膜にのみIgEが検出)と、3) 非IgE型ARに分類される。我々はアトピー型ARと局所性ARのモデルマウスを作製し、その発症機序を明らかにした。さらに我々は、非IgE型ARモデルマウスを新たに作製し、その発症機序を解明し2017年1月アレルギー研究で最も権威のある米国アレルギー・喘息・免疫学会誌 The Journal of Allergy and Clinical Immunologyに発表した。一方、最近問題となっている環境微粒因子(PM2.5)のAR増悪機序とその予防法を確立し論文発表した。いずれの研究成果も兵庫医科大学広報課を通じて報道各社からプレスリリースにより広く社会に公表し、大きな反響を得た。

近年アトピー素因を持たないヒトが毎年数百万人単位で花粉症を初めて発症することが報告されている。また、PM2.5によるAR症状の悪化など国民のアレルギー性鼻炎に対する関心度は非常に高い。そのため、今後も慎重な研究と解析を重ね、新規治療薬の開発へ向けた基盤を形成して行きたい。尚、PM2.5とARに関する研究は既に、「微粒子状物質によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤」(特願2015-026712)で特許申請を完了した。

研究を絶え間なく推進して行くためには研究資金と研究スタッフの確保が不可欠である。幸い、十分な研究資金の基、講師と大学院生達が精力的に研究を推進している。

善本知広 研究所教授
善本知広 主任教授
責任者| 善本 知広(主任教授)
講師| 松下 一史
TEL| 0798-45-6789
FAX| 0798-40-5423
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