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ステロイドによる合併症
潰瘍性大腸炎の患者さんの最も大きな問題はステロイド治療を受けてきておられることです。ステロイドホルモンは炎症をおさえてくれる重要な治療薬ですがその一方で、細菌など感染しやすくなる「易感染性」と傷の治りを遅くする「創傷治癒遅延」をきたします。このホルモンは副腎皮質という所から分泌され,正式には「副腎皮質ホルモン」と言います。ストレスがかかると普段の約12〜15倍の量が分泌されます。
ところが、今まで外部からホルモンを投与されていたため、患者さんの副腎は眠ってしまった状態となり、ステロイドホルモンをほとんど分泌しなくなっています。これを2次性副腎機能低下症と言います。手術時にステロイドの副作用が怖いからと言って、副腎機能低下の状態で外からのステロイドホルモンの投与を急にうちきると,手術のストレスに耐えきれなくて副腎不全という状態になり、心臓が止まってしまうことになりかねません。このため術直後もステロイドを、必要な量だけ大量に投与します。これをステロイドカバーといいます。私達は投与方法を決め、ステロイドカバーをできる限り安全に行えるようにし、その後徐々に減量していく方法をとっています。当科では副腎不全で亡くなった方はありませんし、全員ステロイドから離脱しておられます。
手術に関する合併症
1)術後早期合併症
@骨盤内感染症
骨盤内感染症は回腸肛門吻合術後の最も危険な合併症であり、これをいかに防ぐかということが本術式改良の大きな目標でありました。手術を行った骨盤内(回腸肛門吻合部,回腸嚢周囲など)に膿がたまる状態であり腰痛や肛門部痛,発熱が起こります。
A腸閉塞
腸管の通りが一時的に悪くなり、入院にて保存的治療を必要とする事があります(輸液、経鼻的にチューブを挿入し、腸管内容物を持続吸引する)。 保存的治療によって軽快しない場合は、手術治療を要することがあります。
B排尿機能障害、性機能障害
骨盤内には排尿機能、性機能を司る神経が存在します。直腸癌術後では、神経温存術後でも
排尿障害:約10%
勃起障害:約10%
射精障害:約20%
程度出現するとの報告があります。潰瘍性大腸炎は良性疾患ですので、直腸癌の神経温存術以上にできる限り神経を温存します。しかし、約8%前後の症例で何らかの機能障害を生じます。
排尿機能に関しては、ほとんどの症例で改善しますが、男性機能に関しては、経過とともに改善する症例と、しない症例が約半数づつ存在するというのが現状です。
C死亡
手術自体による死亡はありませんが、ステロイド治療のため腹膜炎の所見が隠れてしまい、大腸穿孔が分らずに手術時期が遅れてしまった方、手術時既に汎発性血管内血液凝固症候群(DIC)が起こっており、1日で亡くなった方、手術をためらっているうちに敗血症となり,肺炎や出血性尿毒症症候群を併発し亡くなった方、手術は成功していたにもかかわらず、ステロイドによる合併症(肺梗塞や副腎不全)で突然なくなった方など10人(2.9%)あります。これらの辛い経験を繰り返さないために、私共が言えることは家族の方も含め,手遅れになる前に手術を決心してくださいということであります。
D下痢またはhigh output症候群
肛門から1回1500ml以上の排液が起こります。脱水になり,のどが渇いて、身体がだるくなってひどいと熱がでたりします。ただし脱水がこわいため1回1500ml以上も水をとってしまっている方もあり、それを下痢と間違って来られる方もあります。ご自分で飲む水、お茶、ジュースなど水分量にも気を配ってください。その一方で、夏の暑さや風邪気味の時など脱水に対して特に注意が必要です。
2)術後晩期合併症:
次に述べるものは人工肛門閉鎖後起こってくる合併症で晩期合併症と呼んで区別しています。
@回腸嚢炎
回腸嚢に起こる原因不明(非特異性ともいいます)の炎症で頻便,下痢(時に失禁,下血),腹痛,発熱の症状で起こります。10年経過した症例の12%に見られました。抗菌剤,抗生物質,ステロイドの注腸,絶食+高カロリー輸液などの治療で多くの改善しますが、症状を繰り返す難治性のものは永久人工肛門にせざるをえなくなることがあります。
A痔瘻
これも易感染性のため起こってくる合併症ですが,人工肛門閉鎖後,時間がたって起こった痔瘻あるいは肛門周囲膿瘍を起こすことがあります。ただ、これによる永久人工肛門となった人は1人のみでした。
B尿管結石
脱水傾向にあるため,人間の体は尿の排泄をおさえようとして尿が濃くなり,尿管結石ができやすくなったりします。
C胆石症
胆汁酸の消化吸収が変わることにより,胆石が胆嚢の中にできやすくなったりします。
D貧血
ほとんどの場合、鉄剤の注射または服用や鉄分の多い食事をしてもらうことで改善します。
Eステロイド離脱症候群
ステロイドを減量していくと全身倦怠感(体がだるい),頭が痛いなどの不定愁訴が起こり,ステロイドを切ることが難しい場合があります。
F腸閉塞
晩期合併症として腸閉塞をきたし,入院加療を必要とする場合があります。
予期せぬ合併症
潰瘍性大腸炎が難病指定を受けているように、術後も予期せぬ合併症を生じることがあります。これは術前から予測することができませんので、生じた場合はその時、最前の処置をとります。
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