1.内科的治療について

 この病気は本来良性の病気ですが,原因を完全に駆逐してしまうような,確実に効く薬がまだ発見されていません。このため,内科的治療(保存的治療などとも言う)の目的は炎症を抑え,症状の消失と大腸機能の回復を図ることにあります。 まずステロイドホルモン(プレドニン,ソルコーテフ,デキサメサゾンなど),サルファ剤(サラゾピリン,ペンタサなど)の薬がよく用いられます。食事療法は乳製品を避けることが推奨されますが,重症になると絶食で高カロリー輸液の点滴が行われます。さらに免疫抑制剤(イムランなど)の投与や最新の治療では白血球除去療法などがあります。これらを行って再燃あるいは増悪を防ぐことが内科的治療を正しく行う基本となります。

2.外科的治療について

□■□  なぜ手術が必要か?  □■□


 
前にも述べましたように,抗体に対する場である大腸粘膜が原因となっていますから、大腸を取り除いてしまえば根治することができます。手術すれば治るからと言ってなんでもかんでも切ればいいというものではありません。しかし,良性の病気であっても手遅れになると生命がなくなったり障害が残ったりします。ですから,手術の時期を逸してしまわないよう,よく注意することが大切です。
 手術を必要とする場合を手術適応といいます。これを次に述べますが,厚生省難治性炎症性腸管障害調査研究班の手術適応をもとにしたものです。

◆手術適応
■絶対的
手術をしないと生命に関わるため,絶対に手術を必要とするものをいいます。
■相対的
医療者側と,患者側の両者が相談して,手術をすると決定する場合。
■緊急手術
急いで手術を必要とする(少なくとも7日以内に)場合。
■待期手術
患者さんの全身状態を整え,手術の準備を十分にして行う場合を待期手術といいます。

                             

以下はそれぞれの番号の説明です。
1)劇症&重症
2週間以上,厳重に内科的治療を行っても効果のない激症,または重症の潰瘍性大腸炎です。
2)大出血
輸血をしても追いつかないぐらいの出血と考えてください。
3)穿孔
大腸が破れた場合 
4)中毒性巨大結腸症
大腸の直径が6cm以上に膨れ上がって,毒素が体中に回ってしまうもの。
5)癌
潰瘍性大腸炎は大腸癌の高危険度群であり,発癌率は10年で1-2%15年で3%前後20年で2-8%25年で4-12%と増加します。(参考文献6)。一般の大腸癌の発生率が0.3%といわれていますので,10年で3倍から6倍の発癌率といえます。
7)難治性
元々難治性の病気ですが,その中でも難治性の潰瘍性大腸炎といわれているものが,表にあげた3つです。すなわち,入・退院を繰り返し,十分な社会生活が営めない場合と考えて下さい。
8)局所合併症
大腸病変部自体の合併症です。狭窄は大腸が狭くなって,便が通らなくなってきた場合。瘻孔は腸と腸,腸と膀胱,腸と膣,腸と皮膚などの間でトンネルができて,便がそちらへ流れ出てくる場合。クローン病に多く見られますが,潰瘍性大腸炎でもおこります。
9)腸管以外の合併症
以下の3つは,抗原となる大腸粘膜の除去により,改善や治癒が期待されるほか,進行を止めることになるため手術適応となります。
●壊疽死性膿皮症⇒ 皮膚が脱落して膿がたまるもの。大腸をとると90%が治癒します。
●ぶどう膜炎(虹彩炎)⇒ 眼の病気であり,失明することもあります。重症では大腸全摘術の適応となります。
●発育障害⇒ 小児の潰瘍性大腸炎の適応ですが,ステロイド治療の副作用にもあります。
10)治療薬の副作用
 ◇サラゾピリン
●血小板減少症
血液中の止血に関わる成分が減少してしまうため,少しの傷でも出血が止まりにくくなります。
●無顆粒球症
細菌感染を防ぐ白血球の中の顆粒球がなくなり,肺炎などを起こして死に至ることがあります。
●膵炎
急性膵臓炎をおこすことがあります。

◇ステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン)(参考文献6)
●社会生活に影響を及ぼす副作用[(注)を参照して下さい。]
骨頭壊死,骨粗鬆症→骨折,白内障,緑内障,難聴,高血圧症,糖尿病,血液凝固異常→血栓症,ステロイド筋症,ステロイド神経症,発育障害,精神障害→不眠,うつ状態

●社会生活にはそれほど影響はないが,容姿など心理的影響のある副作用
満月様顔貌,中心性肥満,皮膚線条,多毛,脱毛,ざ蒼(にきび)
これらの中で,一度起こってしまうとステロイドの投与を中止しても治らない(「不可逆性」と言います)のは,骨頭壊死,難聴です。
そのほかのものは合併症の進行状態にもよりますがステロイドを中止していくと治ります。

11.その他
これら副作用や癌を防ぐため,完全な適応となる前に患者さんが希望されて手術になる場合です。

* (注)骨頭壊死:主に股関節を形成する大腿骨の頭の部分に好発する状態であり,骨が壊死(腐ってくる)になってくる状態です。大腿骨頭を切除して人工骨頭を入れなければならなくなります。

(注)難聴:耳が聞こえなくなります。

(注)ステロイド筋症:筋肉が細っていき,起立もできなくなることがあります。