直線上に配置

バナー

フレーム
今回、食道癌のホームページを公開いたしました。教室での食道癌治療指針、成績を中心にわかりやすく解説いたしました。
直線上に配置

食道癌のホームページ

メール

食道癌は、20-30年ほど前までは治療が困難で1970年代の教科書の記載では、長期生存はほとんど望めませんでした。しかし、早期診断方法の開発、手術方法および術後管理の進歩により最近では生存率が向上しています。また、一定の条件さえ満たすことができれば、内視鏡で治療を完了させることができます。しかし、内視鏡的治療の適応から外れると手術ということになります。

はじめに

疫   学

食道癌は、女性より男性に多く、比較的高齢者に多いといわれています。

原因はタバコとアルコールがと言われています。近年、アルコールを分解するアルコール脱水素酵素(ADH)、あるいはアルコールの代謝産物であるアルデヒド(二日酔いの原因)を分解するアルデヒド脱水素酵素の遺伝学的異常がいわれています。また、のどの粘膜と食道の粘膜は同じ扁平上皮ですので、食道がん患者さんには、必ず耳鼻科領域のがんの検査(のどのがんの検査)も受けていただく必要があります。また、食道がんは、発見されたときにすでに進行した状態が多く、化学療法、放射線療法、手術も含めた集学的治療が必要となります

臨床症状

早期食道癌は、症状がほとんどありませんが、食道の“しみる感じ”を自覚することがあります。しかし、進行してくると、喉のつっかえ感、胸痛、体重減少、咳、声がかすれるなどの症状を呈します。

食道癌の検査

1)内視鏡検査:最も重要です。ヨード染色(正常部位は、茶褐色に染色され、がん、炎症では染色されない)を行い、がんの進展範囲を決定します。また、同時に超音波内視鏡を用い、がんの深達度(癌の深さ)、リンパ節転移状況も検索します。

 注)早期食道癌は、ヨード染色して初めて発見できるものも多いです。

2)食道造影:進行食道がんの部位診断に有用です。ただし、食道の早期がんを食道造影のみで診断するのは、非常に危険といえます。内視鏡検査と併用することをお勧めします。

3)CT(胸腹部)、MRI: 進行食道がんの他臓器(気管、大動脈など)への浸潤の有無、リンパ節転移、肝臓、肺への転移をしらべます。

4)骨シンチ:ラジオアイソトープを注射し、癌の骨への転移を調べます。

5)頚部超音波検査:食道がんは、頸のリンパ腺にも転移をおこします。頚部の超音波検査で、リンパ節の腫脹の有無をCheckし、場合によっては、リンパ節に針を刺して、悪性細胞の有無を調べます。

食道がんのステージについて

日本の癌取り扱い規約とTNM分類(諸外国の分類でinternationalである)があります。近年、両者は統一されつつあります。 日本の規約で説明いたします。

食道がんの病期は

1、     癌の深さ(深達度)  T−因子で示される。

2、     リンパ節転移 N-因子で示される。主病巣に近いリンパ節より14まで示されます。

3、     他の臓器への転移 M-因子で示されます。

3つの因子で決定されます。

 

 

 

 

 

 

壁深達度/リンパ節転移

N0

N1

N2

N3

N4

M1

Tis

 

 

 

 

 

 

T1a

0

T

 

 

 

 

T1b

T

   U

 

 

 

 

T2

 

 

 

   V

  Wa

  Wb

T3

 

 

 

 

 

 

T4

V

 

 

 

 

 

 

ステージ、深達度により治療方針が異なります。

壁深達度について

食道壁の深達度について、説明いたします(下記の図は、食道壁を拡大したものです)。

食道壁は、内腔面より(食事が接触する部位)より、粘膜層(T1a)→粘膜下層(T1b)→固有筋層(T2)→外膜(T3) とつながります。 他臓器(大動脈、気管等)に浸潤するとT4になります。

内腔

粘膜固有層 T1a

筋層 T2

外膜 T3

粘膜下層 T1b

粘膜筋板

リンパ節転移について

食道がんは広範囲にリンパ節転移をおこすことが知られています。 もちろん、癌の深達度が深くなるにつれて、リンパ節転移の頻度は増加します。

頚部

胸部

腹部

癌が、胸部食道に存在しても、胸部のリンパ節にとどまらず、頚部、腹部のリンパ節にも転移します。
 また、胃に近い下部食道がんでも、頚部リンパ節に転移しますし、頸に近い癌でも胃の周囲のリンパ節に頻度は低いですが転移することが知られています。

他臓器への転移について

食道がんは、悪性度が高く、早期に肝臓、肺、骨、脳などに転移します。いったんこのような臓器に転移しますとその予後は、不良です。全身疾患と考え、化学療法を行うのが原則と考えています。手術の適応はありません。

食道がんの治療について

食道がんは、悪性度が高く、早期にリンパ節または、遠隔臓器転移をおこします。従いまして、手術のみではなく、放射線、抗がん剤も含めた集学的治療が必要となります。当科での治療方針をお示しします。

早期食道がんの治療

早期食道がんは、原則的に内視鏡による治療が行われます。

早期食道がんの定義:
   原発層の壁深達度が、粘膜層にとどまり、リンパ節転移を認めない食道がんを ”早期食道がん”と定義する。

1)内視鏡的食道粘膜切除術(EMR):

内視鏡を用い、食道粘膜を切除いたします。所要時間:30分ー1時間です。
2-3cm以下の小さい病変、病変の個数が2-3個以内に適応があります。

2)非開胸食道抜去術

胸を開けずに食道のみを抜き去る方法です。がんの深達度が浅いけれど広範囲に及んだり、多発しているときが適応となります。胸を開けない分、手術の侵襲は少ないですが、食道周囲のリンパ節が取れないという弱点があります。

進行食道がんの治療

進行食道がんの治療は、手術のみで治癒する症例、手術のみでは根治は不可能で抗がん剤、放射線療法を必要とするものがあり、集学的治療が必要です。
当科で行っている進行食道がんの治療指針をお示しします。

1、癌の深達度が、粘膜下層、筋層に及んでいる症例
 CT、超音波内視鏡にて、リンパ節転移が数個以内の症例は、食道切除術を行います。しかし、明らかなリンパ節転移が、数個以上あるような症例は、原則的に術前に原発層と転移リンパ節を含めた化学放射線療法(抗がん剤+放射線、CRTと略します)を行い、原発層と転移リンパ節を縮めてから手術をおこないます。

2、癌の深達度が、食道外膜に及んでいたり他臓器に浸潤している症例
 
原則的に術前化学放射線療法を行い、その後食道切除術を行います。

 

化学放射線療法(CRTと略する)は、放射線と抗癌剤を併用することにより癌にたいする治療効果をより高めようとする治療方法です。兵庫医大第二外科では、本治療法を1997年度より導入し、2004年12月現在、術前CRTは約60例の患者さんに施行しています。根治的CRTは約20名の患者さんに施行しています。

使用薬剤と放射線:

抗癌剤としては、5-FU、シスプラチンを用います。5-FUは古典的な抗癌剤で24時間持続投与します。シスプラチンは白金を有する抗癌剤で、従来より卵巣がんなどに有効といわれていた抗癌剤で放射線照射前2時間で点滴します。放射線が2Gy/回という単位を術前照射では20回、計40Gy、根治的照射では、25−30回、計50-60Gyです。抗癌剤は、放射線照射中、1週目と(4週目)に投与します。

食道癌の化学放射線療法について

化学放射線療法の副作用について

主な副作用は、白血球低下、全身倦怠感、食欲不振です、それぞれ約半数の患者さんに認めますが、この副作用による死亡症例は現在のところ認めていません。

癌に対する化学放射線療法の効果:

癌に対するCRTの効果(癌の大きさが治療前の1/2以下に縮小すること)は、約60-80%です。2002年までの成績の検討では、放射線照射範囲は、食道の主な癌の占拠部位に加えて転移リンパ節も含めるほうが望ましいことがわかっています。したがいまして、治療前のCT、超音波等により転移リンパ節の有無を十分に判断し、転移リンパ節が認められれば、そのリンパ節をも含めた照射が望ましいと考えています。

術前化学放射線療法の成績:

がんの治療効果は、生存率で評価されます。いくら、前治療で癌が縮小してもそれが延命効果をもたらすかどうかはわかりません。2002年までの約30例の治療成績について解説いたします。

CRT有効例

グラフの縦軸が生存率(スタート時が1.0で100%生存を示します)、横軸が生存期間(月)を示します。図が示しますように、CRTの有効症例の予後(生存率)は、無効症例に比べ良好です。また、CRT導入以前の当科での進行食道癌の5年生存率は20%前後ですので、CRT導入により生存率が有意に向上しています。

CRT有効例

CRT無効例

当然の結果ですが、このグラフより、手術により完全に取りきれた症例の生存率は、取り残し症例に比べ良好であることがわかります。

手術により癌が取りきれた症例

手術で癌が取りきれなかった症例

食道CRTの今後の展望

上記、お示しいたしましたように、進行食道癌にたいして、化学放射線療法が有効な症例、かつ癌が完全にとりきれた症例の予後は良好です。従いまして、術前CRTの目的は、完全に癌が手術で取りきれるまでに癌を縮小させることにあります..。2003年度より術前CRT無効症例を可能な限り減少させる目的で、投与抗癌剤の量および投与タイミングを変更した新たな術前CRTのスケジュールを考案し現在にいたっています。

また、ここではお示ししていませんが、リンパ節転移個数が4個以上の症例の生存率は、3個以下の症例に比べ不良です。転移リンパ節を含めたCRTが望ましいと考えています。

食道の手術は、消化器外科の内でも、最大級の手術に属します。一般的には、合併症も小さいものを含めると約50%に存在すると言われている難しい手術です。胃癌、大腸がんと異なり、手術による死亡率(手術関連死、術後1ヶ月以内の死亡)が高いことが知られています。当科での死亡率は、在院死(入院中に死亡)も含めて平均5-10%程度で、ほぼ全国平均に近い値です。当然、肝硬変、肺機能障害を有する患者さん、高齢者、脳卒中の既往歴のある患者さん、全身的な病気を有している患者さんなどの死亡率は、高いと考えています。
当科における主な術後合併症としては、吻合部縫合不全:10%前後、呼吸不全:10%-20%前後、反回神経麻痺(食道癌は、声を出す神経(反回神経)沿いのリンパ節によく転移しますので、このリンパ節も切除することになります):20% 程度にあります。

手術方法は、一般的には、胸を開いて、食道切除とともに周囲のリンパ節の郭清も行います。 ついで、おなかを開いて、胃のロールを作ります。さらに、頚部を切開して、頚部のリンパ節の郭清を行い、頚部より残った頚部食道を引き出します。最後に、胃のロールを胸骨の後ろを通し、頚部まで挙上、頚部食道と胃のロールを吻合します。手術時間は、6-8時間、出血量は600-1200ccです(癌の進行度、体格等による個人差があります)。

食道癌の手術について

最後に

当科では、食道癌手術(開胸手術)を30例弱/年間、内視鏡的食道粘膜切除術を15-20例/年間、施行しています。
開胸操作を有する食道癌の手術は、大きい手術で、しかも合併症も多く報告されていますので、十分に担当医と話し合いの機会を持たれ上で治療に望んでください。

 また、質問等がありましたら、遠慮なくご相談ください。

追伸:食道癌ホームページ公開が遅れましたこと深くお詫び申し上げます。

本稿作成者:
  
藤原由規(Yoshinori FUJIWARA)
      兵庫医大第二外科 助手(学内講師)
      上部消化管グループ 食道外科担当
       外来担当日:1,3,5週、土曜日、午前(初診、再診)
               毎木曜日:午後(化学療法外来、予約のみ)
  
       e-mail:fujiwa2s@hyo-med.ac.jp
       TEL:0798-45-6372(兵庫医大 第二外科、医局)

メール