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漏斗胸の手術(Nuss法)について

1.漏斗胸とは
  漏斗胸は、胸骨とそこにつながっている肋軟骨、時として肋骨の一部が背骨に向かって漏斗状に陥凹している状態です。原因に関しては肋軟骨の過成長(成長しすぎる)により肋骨が後方へ押され胸が凹む、上気道感染を繰り返し奇異呼吸が長く続いたため前胸部が凹む、など言われていますが、ハッキリした原因はわかりません。通常は胸郭の変形以外の症状はみられませんが、陥凹が強くなると喘息や易感染性などの呼吸器症状や心電図異常などの循環器症状を伴います。こういった症状を伴う場合は治療の適応となりますが、とくに症状がなくても陥凹が目立って本人の精神的な負担が強い場合は治療対象となります。
< 術前の胸部写真とCT画像 >

2.手術方法(NUSS法)
  当院で行っている治療は、落ち込んでいる胸骨を金属プレートにより持ち上げることを目的としています。両側胸部の約2cmの皮膚切開創から胸腔鏡のガイド下に陥凹した胸骨後面にプレートを挿入して持ち上げ、プレートの両端をろっ骨で支えます。


3.手術の合併症
(1) 無気肺
  手術後は、胸が痛いため普段のように身体を動かしたり、勢いよく痰を出したりできません。このため痰が気管支に詰まり肺の一部がしぼんでしまいます。これを無気肺といいます。肺炎を起こさないよう抗生物質を使いながら痰が取れるのを待ちます。

(2) 気胸・皮下気腫
  胸腔に空気が残ることです。手術を終了する前に十分肺を膨らませて胸腔中の空気を追い出しますが少量の空気は残ります。空気の量が多い場合には注射器等で空気を抜く場合があります。皮下気腫を合併することがありますが、通常は1−2週間の経過で自然に吸収されます。

(3) 胸水
  胸腔に液体が溜まることです。発熱や痛みを伴うこともあり、そのような場合は抗生物質や消炎鎮痛剤の投与が必要になります。

(4) 血胸
  胸腔に血液が溜まります。量が多い場合は、管を入れ溜まった血液を抜きます。 少量であれば、4週間ほどで完全に吸収されることが多いようです。

(5) 膿胸
  胸腔に膿が溜まることです。大変重篤な合併症で、治療に時間がかかります。場合によってはプレートを抜去しなければならない場合もあります。

(6) 心臓、心嚢の損傷
  心臓の近くを手術しますので心臓あるいは心嚢(心臓を包んでいる膜)を傷つける可能性がありますが、胸腔鏡ガイド下に行うことにより安全に行うことができるようになりました。

(7) 出血
  通常出血はほとんどありません。しかし、手術には100%ということはありませんので、輸血が必要になる可能性もあります。

4.手術後は
(1) 痛みがなく経過が順調であれば、通常手術の一週間から10日後に退院となります。
(2) 術後1ヵ月は運動や重いものを持つことは控えてください。
(3) 術後1-3ヵ月は軽い運動は可で日常生活に制限はありません。術後3ヵ月以降は運動制限もなくなります。
(4) プレートを抜去する手術は2年後です。

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