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兵庫医科大学公衆衛生学教室では、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)と中国国家自然科学基金委員会(NSFC)との二国間交流事業による支援を受け、2009年8月3日(月)〜5日(水)に兵庫と東京において、日中共同セミナー「日本と中国における大気汚染とその健康影響の比較」を開催しました。
日本ではかつて多くの工業地帯において大気汚染による健康被害が発生しましたが、様々な対策により大気環境は大きく改善しました。しかし、自動車の増加に伴って幹線道路沿道における粒子状物質を中心とした大気汚染は現在も続いており、住民の健康に及ぼす影響が憂慮されています。一方、中国では急速に経済発展が進んでおり、工場に由来する大気汚染に加えて、自動車の急激な増加に伴う大気汚染も大きな問題となっています。また、中国では春季に黄砂が大量に飛散し、日本への飛来も観測されていますが、その実態や健康影響に関する知見は十分ではありません。
このように、大気汚染は日本と中国に共通する課題であり、それぞれの国における大気汚染とその健康影響について共通点と相違点を明らかにすることは両国にとって有意義なことであると思われます。
今回のセミナーは、日本と中国で大気汚染の健康影響に関する研究を行っている研究者が学術交流を行うことを目的としたものです。中国より15名の研究者が来日され、日本側参加者とともに、それぞれの研究成果を発表し、両国における大気汚染の健康影響について討議しました。大気汚染の健康影響が従来のようにそれぞれの国や地域の問題としてとらえるだけでなく、国際的な視点に立った研究が必要であることが認識されました。また、参加者間の友好関係を築き、今後の共同研究の可能性についても意見交換を行うなど、大きな成果を得ることができました。
兵庫医科大学公衆衛生学教授
島 正之