なぜ、足の静脈瘤ができるのでしょうか?
人も哺乳類です。立位の2本足で生活をしていますが、もともとの体の構造は、四つ足で歩く動物から進化または変化したものです。
犬や猫など四足歩行の動物では、体の割に足と心臓との高さの差が短いのですが、人は2本足で立つ生活ですから、足と心臓の高さに大きな差があります。そのために足の静脈の血が心臓に戻りにくいのです。
心臓はポンプで、体から静脈を通って心臓に戻ってきた血を肺に送り出したり、肺できれいになった血を動脈を介して全身に送り出す仕事をしていますが、足の静脈血を吸い上げる機能はありません。
すると、どうして足の血液(静脈血)は心臓に戻るのでしょうか?
実は、足の静脈血は、足の静脈にたくさん付いている「弁(静脈弁)」と足の筋肉の収縮きで足から心臓の方向に血液を送っているのです。足は「第2の心臓」とも呼ばれますが、正常では多くの静脈弁と筋肉の収縮のおかげでポンプの機能をもっています。
ところが足に静脈瘤が生じたほとんどすべての患者さんでは、その部の静脈弁が機能していないことが判っています。
足の静脈のかたち
足の静脈は、心臓から足に送られた血液を、心臓に戻す帰り道です。
人の足の静脈には深いところを通っている「深部静脈」と、表面を通っている「表在静脈」があります。
健康な足では、足の血液を心臓に戻す役割の9割以上が深部静脈を介して行われ、表在静脈は1割以下の働きしかありません。
そのため、狭心症という心臓の病気の治療などに、足の静脈を取ってバイパス手術をすることがありますが、表在静脈を取られた足でも、不都合を残すことはほとんどありません。
静脈瘤でふくれてくる静脈は、このほとんど仕事をしていない静脈です。
本来仕事をしていませんが、ふくれてくるといろいろな症状「足が疲れ易い」「こむらがえり」「足のだるさや痛み」「湿疹ができる」「きず(皮膚潰瘍)ができて治らない」などの症状で出てきます。
足の静脈瘤の種類
足の静脈瘤には大きく分けて2つのタイプがあります。
1.足の表面のふくれてる(蛇行している)血管に原因のある場合
2.足の深部の静脈に原因のある場合
1.足の表面のふくれてる(蛇行している)血管に原因のある場合
足の静脈瘤の多くがこのタイプです。1次性静脈瘤と呼ばれています。
ほとんどの場合、足の付け根にある静脈弁に逆流があり、その逆流を治療することで症状は軽快します。
2.足の深部の静脈に原因のある場合
足に静脈瘤のある患者さんのうち、頻度は多くありませんが、本来なら足の静脈のほとんどを心臓に戻す仕事をしている深部静脈が詰まっていたり、狭くなっているために、代わりに「表在静脈」がそのバイパスとして働き、結果的に静脈瘤を作ってしまう状態です。実際にふくれている場所以外に原因がありますので、二次的に生じたもので、2次性静脈瘤と呼ばれています。
この場合は、表在静脈がふくれているからといって、これをとったり目立たない様にすることはその足全体の状況を悪くしてしまいます。見た目には、ほとんど違いの無い病状ですが、治療法が全く違ってきます。
治療の種類
1.圧迫療法
非常に軽症の場合は、下肢静脈瘤専用のストッキングや弾力性のある包帯を巻く治療(圧迫療法)を行います。また足の深部静脈の流れが悪い場合は、この治療が中心になります。
2.逆流静脈結紮(けっさつ)術+圧迫療法
足の表在静脈に逆流があり深部静脈の流れの良い場合は、その静脈を縛る治療(小手術)と、圧迫療法を行います。
逆流している静脈が、ふとももの内側の表在静脈(大伏在静脈:だいふくざい静脈と言います)で、これの根元を縛る治療を大伏在静脈高位結紮術(こういけっさつじゅつ)と呼んでいます。
単にこの逆流静脈を縛り圧迫するだけで、非常に効果の見られる場合が多いです。
3.逆流静脈結紮術+硬化療法
さらに逆流によって静脈が太くなっている場合や蛇行している場合は、静脈を縛る手術のあとに「硬化療法」といってその静脈に薬を入れ血管を細くする治療を併用します。
4.ストリッピング手術:静脈抜去(ばっきょ)術
深部静脈の流れが良く、静脈瘤の程度が高度な場合や皮膚潰瘍(キズ)が出来ている場合、これによる湿疹のある場合は、全身麻酔か腰から下の麻酔(盲腸の手術の麻酔と同じ)をしてふくれている静脈を抜き取る手術が必要になります。この治療法は、足の静脈瘤に対する根治的治療法です。
当科では、足の静脈瘤の治療は、原則として入院治療で行っています。ごく軽症の場合、比較的痩せている方で他の病気や既往歴のない患者さんに対してのみ外来通院で治療を行うこともあります。