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CPC-6   口腔内の白色丘疹 

  ○久野 芳範(名古屋市大)

68歳、女性。
既往歴、家族歴に特記すべきことなし。

初診の約1年前に口腔底および頬粘膜に白色の丘疹が出現し徐々に増加してきたが、特に自覚症状がないため放置していた。歯の治療を受けた
際に、歯科医より口腔粘膜疹の精査を勧められ、1998年12月に名古屋市立大学病院歯科口腔外科を受診した。

初診時、口腔粘膜底面と両頬粘膜に、直径3〜5mm大の多発性で集簇性の白色の平坦な丘疹と、白色レース状の粘膜疹が認められた。自覚症状はほとんどなかった。口腔粘膜以外の皮膚や粘膜に特に異常は認められなかった。歯科口腔外科での口腔底の丘疹の生検の結果は、上方への粘膜肥厚、粘膜の基底層直上から中層にかけての棘融解と異常角化細胞。粘膜上皮の異型性ははっきりせず、異常な核分裂像も見られなかった。粘膜固有層ではびまん性のリンパ球を主体とした炎症細胞浸潤が認められた。尋常性天疱瘡の疑いで歯科口腔外科から皮膚科紹介となった。皮膚科初診時、丘疹の表面にわずかに角質が付着しており、KOH直接鏡検でカンジダ菌陽性であった。ピオクタニン希釈液による含嗽とミコナゾールゲルの外用により約1ヶ月でカンジダ菌は陰性化したが、丘疹およびレース状の粘膜疹に改善は認められなかった。丘疹に近接した口腔粘膜における蛍光抗体直接法の結果は、IgG、IgA、IgMおよびC3cすべて陰性であった。その後ステロイドの外用を開始したがほとんど改善なく、粘膜疹出現2年後の現在も同様の状態が続いている。



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