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CPC-5   左膝蓋部の無症候性局面

  ○谷 昌寛、松本 聡子、中村 敦子(西神戸医療センター)

症 例:79歳,男性.

家族歴:特記すべき事はない.

既往歴:前立腺癌で加療中.

現病歴:約6カ月前より左膝蓋部に無症候性の局面が存在するのに気づいていたが,放置していた.

現 症:左膝蓋部やや内下方に1.5×l.2cm大の,扁平に隆起した,境界明瞭で辺縁整な,紅色の,光沢を有する局面を認める.表面は軽度乳頭状を呈し,一部糜爛を認める.

病理組織学的所見:表皮と連続性に,表皮有棘細胞より小型で,原形質の比較的少ない,類球形の核を有する好塩基性細胞から成る腫瘍細胞の真皮上層へ向かっての増殖を認める.腫瘍細胞巣は異型性を示さない,均一かつ密な細胞から構成されており,腫瘍細胞巣と表皮ケラチノサイトとの境界は明瞭である.腫瘍細胞巣内には小さなcavity形成部位や内腔に面した部分にクチクラを有する管腔構築をしばしば認める.これら腫瘍細胞巣は表皮と連続性を示すだけでなく,表皮から連続性に漏斗状に真皮に向かって伸びる構造物との連続性も認められる.

PASおよびジアスターゼ消化PAS染色で腫瘍細胞内にしばしばグリコーゲンの蓄積を認めるとともに,酵素抗体法を用いたCEAの染色で腫瘍細胞巣内のcavityや管腔構築の管腔面に一致して陽性反応を認めた.


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