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CPC-4   壊疽性膿皮症か? 

  ○後藤 瑞生、岡本 修、藤原 作平、高安 進(大分医大)、野柳 俊明(高田中央)、駒田 信二(国立別府)

症例:58歳女性

主訴:両下腿の排膿を伴う結節

現病歴:1996年、下腿に有痛性皮疹出現し近医受診。1998年12月頃より右下腿に有痛性紅色皮疹出現。穿刺排膿処置を受けたが軽快せず、翌年1月には皮疹急速に拡大し、発熱、全身倦怠感を伴い、同院泌尿器科入院。その後疼痛消失し色素沈着を残し約2週間で退院。
退院後生検施行(標本1、臨床写真1)。しかし、2月に排膿を伴う鮮紅色有痛性皮疹が両側下腿に出現し、3月皮膚科入院。チエナム・ミノマイシンの投与・局所の消毒にて排膿量減少・疼痛軽快し約1週間で退院。4月に再燃、生検施行(標本2)。疼痛のため歩行困難となり、同年5月当科入院。

既往歴:1974年頃卵巣嚢腫摘出術、1990年より慢性腎不全のため血液透析開始、1997年、出血性腎嚢胞のため右腎摘出術。
家族歴:特記事項なし

入院時現症:両下腿に排膿を伴う瘻孔を数個有するエンドウ大から鶏卵大までの暗赤色結節が数個散在(臨床写真2)。結節は高度圧痛あり、熱感を伴い、柔らかく、軽度波動をふれた。周囲には紅暈を伴うエンドウ大の暗赤色結節、黒褐色の色素沈着を認めた。両橈骨動脈の拍動の強さに左右差は認められなかった。

検査所見:WBC 9400/μl(Neutro75.9、Lymph14.5、Eos0.8、Baso0.2、Mono8.6%)、
RBC 280×104/μl、Plt 35.4×104/μl、CRP 14.07mg/dl、ESR:126mm/hr、
TP 6.3g/dl、Alb 3.5g/dl、CHE 4.5IU/l、BUN 56.7mg/dl、Cr 9.3mg/dl、LDH 176IU/l、PT 112.2%、APTT 46.7%、FDP112.1ng/ml、Hbs(-)、TPHA(-)、STS(-)、便潜血(±)。またツ反は0×0/22×17、胸部レ線異常なし、ACE24.5(6.6?23.8)IU/l、血清リゾチーム36.8(5?10)μg/ml、α1アンチトリプシン141(94?150)mg/dl。

経過:37?38℃前後の発熱が3週間持続。膿分泌物および組織培養は繰り返し行ったが陰性であった。皮疹の経過は軽度熱感を有する暗赤色小結節にはじまり、次第に排膿を伴う瘻孔を形成し、約1ヶ月の経過にて瘢痕治癒した(臨床写真3)。この間行った治療としてはヒビテン消毒と下肢挙上による安静のみであった。退院時CRP1.87mg/dlと減少。退院後再燃するもプレドニン(20?30mg/日)内服により軽快し中断にて再発、再投与で軽快した。その後も同様皮疹が単発するためデポメドール局注を行い2000年5月以降再燃をみない。
なお、現在眼科にて前房内に豚脂様プレチピテートを認め、ブドウ膜炎を指摘されているがその原因は明らかになっていない。
 
臨床写真1
臨床写真2
臨床写真3

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