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CPC-2   リンパ増殖性疾患か?血管腫の一種か?

  ○清原 隆宏、熊切 正信、川崎 勇夫(福井医大)、竹内 章晃、桑原 広昌(同形成班)、上田 孝典(同第1内科)

患者:9歳女児。

初診:平成10年11月10日。

既往歴:特別なことはない。

家族歴:特別なことはない。

現病歴:初診の約5年前に右アキレス腱部に紅色丘疹が数個出現した。その半年程前に同部に擦過傷を負ったが治癒していた。結節は次第に増数・融合し、数カ月後には線状に配列するようになった。その後、時に掻痒、疼痛を伴い、近医で外用剤、レーザー治療を受けたが、病変は消失せず、当科を受診した。

現症:右アキレス腱に垂直方向に配列する、50×12mm大の、線状の暗赤色局面がある。表面は不規則に凹凸し、わずかに鱗屑を伴う。局面の周辺には丘疹が数個散在する。また、レーザー治療後の色素沈着がみられる。表在性リンパ節の腫脹はない。

病理組織学的所見:表皮は不規則に肥厚し、リンパ球が侵入している。表皮内に好酸性小体が散在、基底層の空胞変性もある。表皮直下から真皮網状層上部にかけて、結節状あるいは帯状に増殖する単核細胞の浸潤がある。網状層中下層には小結節状に増殖する単核細胞(形質細胞を多く含む)の浸潤がある。結節状に増殖する部分は小型から中型のわずかにくびれのある、クロマチンに富んだ核とわずかな胞体を有する単核細胞からなる。所々に陥凹したvesicularな核と豊富な胞体を有する大型の細胞が散在する。別の部分では、この小型から中型の細胞に囲まれた二次濾胞構造もある。それ以外の帯状に増殖する部分では、リンパ球様細胞、組織球様細胞の他、形質細胞が存在している。また、肥厚した壁を有する細長い小静脈が著明に増生している。

検査:
- 血液生化学検査、Gaシンチグラム、全身CT
- 白血球分画、LDH、sIL-2R
- 血清抗ライム病抗体、HTLV-1
 以上全て異常なし

治療:皮膚生検で、真皮内にリンパ球が結節状に増殖する像がみられたため、悪性リンパ腫の可能性も考慮に入れ、病態解明および治療的意味も含め、辺縁から数mm離して皮下脂肪織のレベルで全切除した。

経過:術後局所再発および転移はない。


 

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