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CPC-1   内臓悪性リンパ腫を合併した環状紅斑の1例 

  ○若原 真美、清原 隆宏、熊切 正信、大森 啓子、石黒 和守(福井医大)、藤田 知三(藤田記念)、上田 孝典(同第一内科)、天谷 雅行(慶応大)、橋本 隆(久留米大)

症例:70歳男。

初診:平成12年1月14日。

主訴:痒みを伴う紅斑,水疱。

既往歴:40歳時,糖尿病。62歳時,脳梗塞。

現病歴:初診の約3ヶ月前に右前腕に強い痒みを伴う紅斑が出現した。近医を受診し,湿疹の診断にてステロイド外用と抗ヒスタミン剤内服で加療された。しかし,皮疹は体幹,四肢に拡大し,紅斑上に小水疱も出現するようになり,藤田記念病院を受診し,精査加療目的にて当科を紹介された。また,この1年間で約4.5kgの体重減少があった。

現症:ほぼ全身,特に両前腕に浮腫性の環状紅斑が多発。一部の紅斑辺縁には緊満性小水疱がある。口腔内には有痛性小潰瘍を伴う。左腋窩に弾性軟の小豆大のリンパ節が触知された。  

血液検査:血液生化学検査にてCRPの上昇とHB-A1,A1 cの上昇がある。腫瘍マーカーではSCC の上昇がある。HTLV-1は陰性,sIL-2レセプターは1540と高値。

全身検索:腹部CT で傍大動脈リンパ節の腫大があり,悪性リンパ腫を疑いCT ガイド下で針生検を施行した。(病理組織所見:好塩基性で大型の腫瘍細胞が,び漫性に稠密に増殖している。腫瘍細胞はvesicular な核をもちNC比が高く,大小不同,濃淡不整が目立だつ。)上部消化管検査では食道全周性,全長にわたり易出血性のびらん,潰瘍がある。食道,胃,十二指腸には径5mm大の小隆起性病変がある。消化管粘膜・骨髄生検でも同様の腫瘍細胞の浸潤がある。
治療&経過:Diffuse large B-cell lymphoma ,stage IVbと診断し,当院内科転科のうえ化学療法を施行した。治療開始後皮疹は速やかに色素沈着を残し消退した。表在性リンパ節も縮小した。



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