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Cardiovascular Division / Division of Coronary Heart Disease, Department of Internal Medicine, Hyogo College of Medicne      サイトマップ 

お問い合わせ TEL. 0798-45-6553

〒663-8501 兵庫県西宮市武庫川町1-1

不整脈グループElectrical Physiology group


メンバー:峰隆直, 貴島秀行, 蘆田健毅, 高橋怜嗣


カテーテルアブレーション・心臓電気デバイス:月曜日・木曜日・土曜日
不整脈外来:月曜日・火曜日・水曜日・金曜日


カテーテルアブレーションを中心に不整脈の患者さんを広く受け入れています。
心房細動のカテーテルアブレーションは年々増えており、2016年12月より冷却バルーンを用いたクライオアブレーションを導入いたしております。
またEnSite Velocity Automap Moduleを用いて、PVCのアブレーションにも力を注いでいます。

診療実績

年度 2012 2013  2014   2015  2016
カテーテルアブレーション 143 152  203  218  245
 内、心房細動アブレーション 89  99  128  124  180 
 恒久ペースメーカ  48 50  53  49  61 
 植え込み型除細動機(ICD)  4 13 
 心臓再同期療法(CRT)  10 13  15 


2017年不整脈グループ外来表

 曜日  月 水   金
 午前   峰     
貴島 
ペースメーカ外来
 午後  貴島 蘆田  高橋    ICD・CRT外来
貴島
蘆田 


カテーテルアブレーション治療について


心房細動のカテーテルアブレーション
 

心房細動のカテーテルアブレーションはラジオ波による拡大肺静脈隔離術を行っています。( Takahashi A, et al. Circulation. 2002 ; 105 : 2998-3003.)
これは心房細動が肺静脈(左房に還流している)からの心房性期外収縮により始まるとする理論に基づいています(Michel Haissaguerre, N Engl J Med 1998; 339:659-666) 。

この方法により心房細動の有意な抑制を認めており、当院での治療成績は、発作性心房細動(1回の発作が7日以内)で70%以上, 持続性心房細動(7日以上持続で2年未満)で60%以上が、その後1年間の心房細動の消失を認めています。

当院ではカテーテル手技に先立ちまして、可能な限り冠動脈CTを撮影し、冠動脈疾患の併存がないことと、左房に還流する肺静脈の形態を確認しています。
これは患者さんにより左房の形態が大きく異なっており、安全に手技をするうえで重要です。
腎機能障害やアレルギーで造影CTが施行できない方は、単純CTで左房構築を行っております。



手技に関しては、まず冠静脈洞に電極カテーテルを挿入した後、ブロッケンブロー法(心房中隔穿刺)にて左房に到達し、各種のカテーテルを進めて行きます。
リング状のカテーテルで電位を取りながら、EnSite Velocityを用いて3次元的に左房を構築します(後述)。
そしてその解剖学的位置を参考にしながら、両側の肺静脈を円状に通電していきます。

また肺静脈は左右に2本ずつございますが、できるだけ心房細動を誘発して、どちらの肺静脈が心房細動を起こしやすいかを観察してから手技を開始しています。





当院ではEnSite Velocityという3次元ナビゲーションシステムを使用することにより、透視線量を減らして、確実なカテーテルでの位置取りができるようになっており、より安全に・より確実に手技を行なっております。











実際の焼灼は電位指標にして肺静脈内に左房からの伝導がなくなることを確実に確認して通電を行います。


肺静脈隔離後には心房細動の誘発性がないことを確認して手技を終了しています。







冷凍アブレーションシステム

従来の高周波アブレーションでは肺静脈開口部の周囲を点と点でつなぐようにカテーテルで焼灼を行っていました。冷凍アブレーションシステムでは焼くのではなく、マイナス40〜50度の亜酸化窒素ガスを入れたバルーンを左心房の肺静脈開口部(入り口)付近まで入れ、冷却することで細胞を壊死させるという治療法です。このたび当院でもこの「冷凍アブレーションシステム」が使用可能となり、これだと肺静脈 1本約3分でブロックが可能で、手術時間はさらに短縮されます。

メリット:手術時間が短縮 心タンポナーデ、心穿孔が少ない 術者によるばらつきが少ない
デメリット:発作性心房細動のみ適応があり   肺静脈形態により時に手技が困難(向かない人がいる)

そのため当院では原則、クライオアブレーションができるかどうかは造影CTの結果を見てから判断することにしています。


心房細動カテーテルアブレーションをうけるまでの流れ

入院より前の流れ

1)受診 (採血、心電図、心エコーを実施します。)
ご紹介、初診を問わず受けつけています。まず、御自身の心房細動がカテーテル治療が向いているのかを知る必要があり、不整脈が持続している時間が大切になってきます。あまり長時間続いているかたにはカテーテル治療は向かない可能性があるからです。それを予測するものに心エコー図検査による左房径が挙げられます。そのために受診当日は皆様に心エコー図検査を受けていただいております。また脈が遅くないかをチェックするために心電図も受けていただきます。また腎臓機能や糖尿病の状態が悪いとカテーテル治療は方法を考えないといけなくなるので、合わせて採血も実施します。

2)電気的除細動
発作性(7日以内に自然停止)するかたは必要がありませんが、持続性(7日以上持続)する場合、特に半年以上持続している方には一度心房細動が確実に止まるのか、止まった後に脈が遅くならないのか、を確認するために1泊2日の電気的除細動「カルディオバージョン」目的に入院をおすすめいたしております。(後述する経食道心エコー検査を事前に行います)
その際に患者さんによってはアミオダロン、ベプリコールという不整脈薬を投与することがあります。これは仮に不整脈が電気的除細動で止まっても、しばらく洞調律(普通の状態)がつづいている方が好ましいと考えているためです。アブレーションが終了したら多くの方では薬は終了しています。

3)心臓CTアンギオ

当院ではカテーテル手技に先立ちまして、可能な限り心臓CTアンギオを撮影しております。これは冠動脈疾患(心臓を栄養する血管の障害:狭心症など)の併存がないことと、左房に還流する肺静脈の形態を確認しています。

これは患者さんにより左房の形態が大きく異なっており、安全に手技をするうえで重要です。また本学の臨床研究から左心耳形態が脳梗塞に寄与する可能性をまとめて発信しており、重要視いたしております。

腎機能障害やアレルギーで造影CTが施行できない方は、単純CTで左房構築を行っております。

4)入院当日
経食道心エコー検査

前述の電気的除細動の時も同様ですが、安全に手技を行うためにも全例で入院当日に経食道心エコー検査を行っております。これは左房の中に(特に左心耳の中)に血栓がないことを確認する上で非常に重要になります。

入院当日は他に心電図検査とレントゲン検査(必要な方のみ)を行います。
またワーファリン内服されている方は当日に採血を追加いたしております。

5)入院後経過

当院では1日最大3件の心房細動のカテーテル治療を行っております。そのために呼ばれる時間が患者さんによって大きく異なります。前日は水分と食事をしっかりとってお休みください。また前日に改めて、手技の説明をさせていただいております。

カテーテル当日は帰室後はベットでの安静になります。当日は歩けません。腰痛を訴えられる方が多いですが、痛み止めで対処いたしております。また帰室後4時間経てば、歩けませんが側臥位での安静が可能です。

カテーテル翌日には歩けるようになります。朝に当直医が穿刺部位の問題がないかを確認しにいきますので、それまでは御病室にいてくださいますようお願い申し上げます。


また合併症がないか、心臓の動きが悪くないかを確認するために、翌日は心エコー、心電図、採血を行っております。翌日の夕方に手技の説明と今後の注意事項をお話しさせていただきます。

その後は心房細動の再発がないかを中心に拝見させていただいております。再発があっても自然停止する際には処置は不要ですが、24時間以上持続してしまうようであれば、再度電気的除細動を施行するかたもいらっしゃいます。

通常、退院はカテーテル翌3日後からといたしております。

6)入院後の生活について 
心房細動は突然死をする不整脈ではないために、心不全を合併しない限り、それを予防するために今までの日常動作を制限する必要性はありません。しかし注意していただくことは数点あります。

禁酒:飲酒は心房細動のリスクになります。後述するBlanking period 内での再発を抑えるためにも、過度の飲酒は控えていただきますよう、お願い致しております。激しい運動の制限:適度な運動は問題ないと考えておりますが、やはり術後間も無くマラソン大会や競技スポーツに戻られるのは再発リスクをあげるかもしれません。一度、主治医にご相談されてからにしてください。

穿刺部位からの再出血:退院まで注意して観察いたしますが、傷の治癒がやや遅い方がいらっしゃいますので、退院後4-5日は注意して御観察ください。

また抗凝固療法についてです。現在のところ明確な中止基準は存在しません。ただし、術後は3ヶ月は通電焼灼部位で血栓ができる可能性があるために内服していただくことが必要になっています。そのためカテーテルを受けてもすぐには抗凝固剤を中止をしないようにお願いいたします。


7)心房細動の再発について

心房細動カテーテルアブレーションの奏功率(術後1年間で心房細動がない方)は、当院での2013-2015年度の統計で・発作性心房細動:70-80% ・持続性心房細動:60-70% と出ています。また術後3ヶ月以内(Blanking period)内では比較的再発が多いのですが、左房焼灼部位の治癒過程や左房が小さくなる過程で不整脈が起こることが知られています(?)。これは後期の’本当の再発’には関連性がないと考えられていますが、少ない方がいいとする報告もあります(?)。入院中の再発であれば、内服の追加や再度DCカルディオバージョン(電気的除細動)を検討させていただきます。

心房細動は突然死する不整脈ではありませんので、再発されても慌てる必要はなく、長期的に一番良いと思われる方法を落ち着いて選択することが肝要です。外来で再発された場合は、再カテーテルアブレーションも含めてさらなる再発を抑制する最善の方法を、患者さんと一緒に考えていきたいと思います。

心臓デバイス治療

ペースメーカー(PM)や植込み型除細動機(ICD)、また心臓再同期療法などをまとめて心臓電気デバイス(CEID)と私たちは読んでいます。
徐脈よるふらつき(前駆失神)や失神などの症状のある方は、恒久的ペースメーカーが必要となります。また致死的不整脈を起こされる方、リスクの高い方も植込み型除細動機の適応となることがあります。

当院では年間でPM約60例,ICD/CRTはそれぞれ10件の新規植え込みがあり、治療に当たらせていただいております。



植込み手技に関して
リードの植込みは当院では現在、腋窩静脈穿刺法による手術を第一に選択しています。そのために血管の造影を予め行っております。なお、腎機能の問題で造影できない方などは経大腿静脈的にワイヤーを留置し、メルクマール法で穿刺をいたしております。
電池ポケットの作成は通常は鎖骨下1?2横指下に作成しています。


デバイス術後は創部感染の予防が重要です。そのために入院中も感染兆候の有無は確認いたしますが、退院後も傷の治り具合によってはテープ保護の継続や翌週の再診の方針で退院させて頂く場合がございます。
多くの方は約1週間の入院期間で退院されております。


植込み後の生活について

心臓電気デバイス(CEID)は電磁干渉が問題視されることがありますが、気をつけて生活すれば問題がありません。重大な報告も近年はほぼありません。
生活環境についても適宜アドバイスをさせていただきます。
特にICD植込みの患者さんは職場の環境調査をメーカーに依頼して行わせていただくこともできます。適宜、ご相談に乗らせていただいております。


完全皮下植え込み型除細動器

従来、心室細動・心室頻拍の患者さんには植え込み型除細動器(ICD)を植え込み治療を行ってまいりましたが、ICDは経静脈リードを必要としそのリードにともなく感染症、心タンポナーデなどの合併症に悩まされてきました。このたび心臓内にリードを留置する必要がないという「完全皮下植込み型除細動器」が使用可能となりました。
メリット
1.手術時に心タンポナーデ、心穿孔、気胸がない    2.静脈アクセスが不要    3.心内膜炎のリスクがない  4.感染した際にも抜去が容易 (血管損傷、心損傷はない)

デメリット
1.ジェネレータが大きくなる  2. 徐脈ペーシングができない


手術
静脈麻酔・全身麻酔で行います。
リードは前胸部皮下と本体は左側胸部皮下に植込み、本体と接続します。除細動ショックはリードと本体の間で行われます。手術時間は90−120分程度(麻酔導入などの時間を含む)です。術後は麻酔の影響がなくなれば歩行も可能で、創部が安定するまで入院で経過を見ますが、問題なければ退院となります(1週間程度)。

創部もあまり目立たず、退院後はほぼ普通の生活ができます。
今後、ペーシングが必要ない植え込み型除細動器適応の患者さんに適応が広がっていきます。





不整脈グループの研究内容  

  • 持続性心房細動ににおいてカテーテルアブレーション術前の対するカルディオバージョン治療が心房低電位領域や術後再発にあたえる影響の研究
    発作性心房細動に対して持続性心房細動ではカテーテルアブレーションの効果が低いといわれ、また無症状に近いかたもいらっしゃるのでアブレーションの有効性も実感できないことが多いです。しかし、洞調律化 のメリットには変わりがありません。昨今、低電位領域が心房細動アブレーション後に与える影響が広く研究されていますが、当科では直前にカルディオバージョンを併用することでどのような効果があるかを検証しています。
  • 糖尿病を有する患者さんにおける心房細動アブレーションにおけるSGLT2阻害薬の役割の研究
    糖尿病の新規治療薬SGLT2阻害薬は心疾患の予後を改善することが知られております。それが心房細動アブレーションにおける役割があるのではないかと考え、投薬群と非投薬群に分けてアブレーション後の心房細動再発抑制有無を検証しています。
  • 心房細動アブレーション後の心房細動の再発とその関連因子
    心房細動アブレーション後の心房細動の再発に関する予測因子として、左房径や心房細動の持続時間などが報告されています。電気ショック後の心電図変化や種々のバイオマーカーと心房細動の再発との関連を調べています。また洞調律時のホルタ―にていち早く・かつ適切に再発を検出できないかを調査しています

  • カテーテルアブレーション後のβ遮断薬内服による後期再発抑制の検証
    β遮断薬は主に心房細動においてはレートコントロールとして使用されることが多いが、継続した内服で心房細動抑制を認めることがあります。私たちはそれがカテーテルアブレーション後のBlunking期間内に内服を継続することにより、後期再発を抑えられるかを検証しています。
  • 心臓再同期療法(CRT)における予後予測因子の検討
    左室壁運動協調障害(dyssynchrony)を伴う心不全患者において、心臓再同期療法CRT)は有効な治療手段として考えられます。当院では2004年の日本での保険償還当初から積極的に導入しており、2015年までの累積では120例を超えています。しかし有効な症例(レスポンダー)とそうでない症例(ノンレスポンダー)が当院でも見受けられ、更なる治療成績の向上が望まれます。適応疾患、併存する内服療法、併発虚血性心疾患、不整脈、弁膜症など多岐にわたる方面から、治療向上に貢献できる因子を調査しています。
  • 心臓再同期療法(CRT)の右室ペーシングに関する研究
    CRTは基本的に右室(RV)ペーシングと左室(LV)ペーシングを基本としています。しかし昨今の研究では、自己のAV伝導が保持されている症例においてはRVペーシングが治療効果を落とす可能性が示唆されています。当グループでは心エコーグループと連携して、洞調律中とRVペーシング中の左室最遅延部位を心エコー図検査(Strain法)を用いて解析を進めています。

  • 植え込み型除細動機(ICD)導入後の治療成績・併存治療について
    致死的不整脈で心肺停止になられた方や失神される方(2次予防)においては、確実に致死的不整脈を予防できうる治療方法であり、患者さんにも安心を提供できる治療方法です。またEF低下を伴う慢性心不全でも1次予防としての適応があります。私たちは植え込んでからの定期外来での経過観察を重要視しており、適切なデバイスモード、並行内服治療の検討を日々行っております。そのためにも検査入院をされる際には、適切な診断のために必要な検査はインフォームド・コンセントの上で積極的に行っております。

  • 電気的除細動による心機能変化について
    ICDによるショック作動は、その後の生命予後を悪化させるとの報告があります。またVT stormの原因になるとの報告もありますが、電気ショック後の心臓への反応についてはまだまだ不明な点が多くあります。我々は、電気ショック作動による心機能の変化およびそのメカニズムに関して検討しています。

  • 左心耳の形態と血栓との関連
    心房細動や心房粗動に伴う左房内血栓が脳梗塞の原因となることは知られています。左房内血栓が形成される要因は様々な報告がありますが、我々は左心耳の形態に着目し、左心耳内血栓と左心耳形態との関係を検討しています。
  • ペースメーカー植え込み後のたこつぼ型心筋症の発生率
    ペースメーカーの植え込みを行うと、一時的に心機能が低下する場合があります。一方、ストレスが原因で心機能低下を生じる心筋症として、たこつぼ型心筋症が知られています。そこで、ペースメーカー植え込み時に生じる心機能低下とたこつぼ型心筋症との関連を検討しています。

兵庫医科大学 循環器内科
       冠疾患内科
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